アルストロメリア
空はよく見るとまんまるだ
どっちが外でどっちが内なのだろうと思った
空や海を見て悩みがちっぽけに見えてなんだか出来る気がする、だなんて言うが
己の存在自体が悩みの私は私自身がとってもちっぽけに見えた
せめてあの青に近づこうと昇ったビルの屋上では
女子高生が飛び降り自殺をしたらしい
この世に生を受けるのが幸か不幸かわからないが
確実に彼女はあの空に近付いたのだろう
屋上から下を眺めてみると
豆粒ほどの人がぞろりと歩いている
各々が仕事に向かい、休憩をし、学校へ向かい
バイトへ向かい、生きていたんだ。
どこか屋台の金魚がヒレを揺らしている様な
妖艶さに似たものがあって吸い込まれそうになった
それに比べ私は
適当に起きて、眠たい体をカフェインに揺すられ
味のしないシリアルをベルトコンベアに乗っけるみたいに口へ放り込んで
誰の助けにもならない仕事をして
家に帰ったらストレスを酎ハイの缶が弾けさせて
疲れた体をアルコールに摩ってもらったら
思考停止寸前の体をベッドに放り込む
その繰り返しが何度も頭で再生された
その間下の金魚達は休む事なく私を招く
見てられないから仕方がなく上を向いて
なんだかさっきより青く見えた気がして
ちょっと私が大人になったのかもと思った
虚しさのあまりに色のない涙が溢れた
あの空が"外"だとしたら私の涙もあの人の涙もいずれ溜まって大きな水槽みたいになってさ、あそこまで泳いでいけるかな
なんてつまらないこと考えた。
ビルの屋上
仰向けで見ていた
水槽の縁で型取られ丸く囲まれた空を
私は幸せと呼びたい